物語


□愛しさは憎しみをも溶かす
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「…あ、いぜん…っ」
ガシャリと背中に背負った斬魄刀を鳴らし振り向けば見開いた目に映る顔。
「おや?せっかく二人きりなのに名前で呼んではくれないのかい?―――…冬獅郎」
おどけたように笑う顔が今まで見てきた顔と違う様に感じるのは髪型の所為か、眼鏡が無い所為か、はたまた…滲み出る黒い霊圧の所為か。
「テ、メェ…よくもぬけぬけと!」
冷静さを失わない様、溢れ出す感情を押し止める為に唇を噛み締める。もう完治した筈の肩の傷が疼き振り払う様に背中にある刀の柄を握った。
「あぁ、駄目だよ。抜くならもっと早く抜かないと」
全てを鞘から出し切る前に柄を握った手を上から包まれ制された。たっぷりあった間合いが今はほんの数センチ。一瞬の出来事に声も出なかった。
「やっぱり背中から抜く、という動作は無駄が多いな。ギンにやったみたいに鞘を溶かすようにする勢いがなくてはね」
鞘も己の霊子で出来ている。腰から抜くよりも動作が大きく反応が遅れる為、鞘の霊子を分解させ抜く、という動作を無くす事が出来る。一度市丸と戦った時に見せた事を言っているのだろう。それを何故奴が知っているのか。


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