過去の女神と未来の天使〈胎動〉
□第拾参話 英国代表候補生 セシリア・オルコット
1ページ/5ページ
一夏とセシリアの勝負が終わり、それぞれピットに戻った。
しかし待っていたのは健闘を讃える褒め言葉ではなく罵声だった。
「よくもここまで持ち上げ、それでこの結果か、大馬鹿者」
「…………」
紛れも無い事実を言われぐうの音も出ない。更に千冬は一夏を叱責する。
「武器の特性を考えないからこうなるのだ。この試合見て少しは勉強しろ」
四人はモニターに映し出されたセシリアとレイを見た。
「貴方のブルーティアーズ、損傷して堕とされてたけど平気なのかしら?」
「おあいにくさま、予備のピットはまだありましてね。そちらこそ確認は大丈夫ですか?」
「ええ、貴方よりはね」
お互いの罵り合いも一旦終結する。セシリアはブルーティアーズを、レイはパレットガンを構えた。
互いに目配せし、試合が始まった。
「いきなさい!」
「させないわ」
レイはブルーティアーズの砲撃をひらりと躱し、射撃範囲外へ抜け出す。
逃がさんとばかりにブルーティアーズはレイを包囲し集中砲火。
今度こそ命中した。
しかし焦ったのはセシリアだ。
「なっ……」
「ISはシールドバリアーを張るとエネルギーが減
る。でも装備で防げばシールドは張らなくてすむのよ」
レイの目の前には黄色い盾が現れていた。
今の集中砲火を全てこの盾一枚で防ぎ切ったことにセシリアは更に驚かされた。
「いくわよ」
レイはパレットガンの照準をセシリアに定めた。セシリアも撃たせまいとブルーティアーズを操作しレイを妨害する。
躱し、守り、撃つ。レイは攻防両方が成り立っている。一方セシリアは撃つ、躱す。守りが欠落している。
やがてレイはパレットガンを引っ込めスナイパーライフルに切り替えた。
「スゴイスゴーイ!」
ルッキーニは試合の迫力に興奮していた。先程の一夏の一方的な守り、特攻とは違いISの能力を十分に引き出している。互角な戦いに周りの観客も沸き立っている。
「流石、イギリス代表候補生と日本代表候補生。格が違うな」「でも、互角ではないね」
エーリカはキッパリと言い切った。
二人の力は拮抗している。誰が見てもどちらか一方的ではない。
「なんだ?動きが違うのか?」
「いや、さっきから日本代表候補生が火力の小さい武器しか使ってないから、それに」
「んー…………ああ!」
「ん、何なにー?」
エーリカの
指す零号機の武装を見てシャーロットも理解し頷いた。その装備はエーリカの読み通りの武器だった。
・