過去の女神と未来の天使〈胎動〉

□第漆話 入学試験
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2011年2月半ば
今日は日本全体で高校入試が行われる。
無論、IS学園も例外ではない。
教員訓練を僅か2ヶ月でこなしたミーナと美緒は千冬から入試について説明を受けていた。


「今日は入試だ。だがあくまで見るのは技術と操作とかそういった類で勝ち負けは全く考えない」
「うむ」
「坂本先生は山田先生と同じく実技を見ろ。私とミーナ先生は他の業務をこなす」
「分かった」
「了解」


千冬はちらっと壁の時計を見た。彼女の弟も高校入試に向かっている頃だ。
そっと千冬は心の中で成功を祈った。










「もすもすひねもす、ちーちゃん?」
『正々堂々と来たな』


電話の向こうで千冬はため息を吐いた。
束は試験会場に止めてある搬送用のトラックの荷台から電話をかけている。元々このトラックも束が潜入するためにカモフラージュしたものだ。


「とりあえずシンちゃんとよっちゃんを送りに来たよ」
『二人は今どこだ?』
「多分入口にいると思うよ。地図も渡したし大じ」
『馬鹿か貴様?』


束ははて?と首を傾げる。キレる寸前の千冬はどすをきかせて束に尋ねた。


『碇は男だろ?』
「見方によっては女の子っぽいかも」
『どちらにせよ、ISの試験会場に男子が来たらどうなる?』
「モテモテのハーレム?」
『馬鹿者、混乱が起きるだろ』


束は事の重大さに気付かず、「おぉーなるほど」と感心した。


『碇と連絡が取れるなら今すぐ試験会場の裏に回れと言え』
「んー、了解」


束は電話を切ってポケットにしまった。しかしシンジに連絡を取ろうとせず、私事を優先してモニターをいくつも展開させた。


「ま、今年から男子はシンちゃんだけじゃないよ」








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