過去の女神と未来の天使〈胎動〉

□第伍話 三人の大和撫子
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IS学園
応接間
テーブルの両側には二人掛けの革のソファが並べられ、レイと美緒はそれぞれ向き合うように座っていた。
二人は言葉も何も口にせず、出されたお茶菓子にも手をつけていない。


「貴方は誰?」


レイは先に沈黙を破った。


「私が先に質問したはずだ」
「先に名乗るのは侍の常識じゃないの」
「私は侍ではない、扶桑皇国のウィッチだ」
「ウィッチ……魔女?」
「ああ」
「毒林檎作るの?」
「お前は何を想像している……」


美緒はやれやれとこめかみを押さえた。


「ウィッチとはな、ネウロイに対抗できる唯一の手段だ」
「ネウロイ?」
「ネウロイは人類の敵、我々が倒すべき相手だ」
「使徒みたいね」


レイは出されたコーヒーを一口啜った。美緒も湯呑みのお茶を飲む。


「使徒?キリストの弟子か?」
「いいえ、ネウロイと同じく人類の敵。私達はエヴァに乗って使徒を倒すチルドレンなの」
「ほほぉ、凄いな」
「そうかもね、実際乗れるのは14歳の人間だけだから……」

お茶を飲み干した美緒は自分で急須に茶葉を入れ、お湯を注いだ。


「ところで」
「何だ?」
「貴方の名前は?」
「…………」


最初の話題が戻って
きた。






コンコン






応接間に黒いスーツを着た女性がやってきた。


「どうだ、大分落ち着いたか?」


二人ははいと頷く。
女性は一人掛けの革のソファに腰掛けた。


「私は織斑千冬。このIS学園の教師だ」
「私は坂本美緒、扶桑海軍のウィッチ……いわゆる軍人だ」
「私は綾波レイ。エヴァンゲリオン零号機のファーストチルドレンよ」
「ウィッチ……エヴァンゲリオン……初めて聞いたな」
「どうやら私が住んでいた世界とは異なるようだ」


美緒は壁に掛けられたカレンダーを指した。


2010年12月


「私が最後に見たのは1944年の6月だ」
「私は2015年7月よ」
「なるほどな。二人が嘘を言ってるようには思えない。だが、その世界に帰る手立てはあるのか?」
「ないな」
「ないわ」


二人は即答した。
千冬はやれやれと呟きながら手にあった資料を渡した。


「それならこのIS学園に入学するのはどうだ?」
「ふむ」
「…………」


手渡された資料をパラパラとめくり中に目を通した。


「このISというのは?」
「そうか、二人は知らないんだったな」
「この世界の常識?」
「まぁ、そうだな」




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