〜短編〜
□雪で遊ぶ
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ボカッ
兼「いだ!」
真剣に雪像制作に取り組んでいた兼続の頭に雪玉は当たった。
兼「何をする!今謙信公の表情という一番難しいところを作っているのだぞ!」
プンプンと片腕を振り回している兼続を無視して三成は言い放った。
三「兼続…お前オロチのオープニングで、飛んでくる矢や鉛玉を怪しげな呪術で防いでいただろう。あれを俺にも見せてくれ」
幸「あー、三成殿はあの撮影の時いませんでしたよね。あれは見事でしたよ。一見の価値ありますよ!」
三「そういう訳だから兼続、俺が雪玉を投げまくるから呪術で止めてみせろ」
兼「え?いやアレは仕掛けがあって…」
パーン!
雪玉は兼続が精魂込めて作っていた雪像に当たった。
パーン!パーン!!
兼続の答えを待たずに三成は次から次へ雪玉を投げ、謙信の雪像に命中させていった。
兼「や、やめろー!しかも股間を重点的に狙うなー!!」
兼続は半泣きになりながら雪像を庇うように前に出た。
三「ならば早くあの怪しい呪術をやってみせろ」
兼「だからアレは私の力ではなく、撮影スタッフの力だ…!上から吊した矢と玉を敵陣から飛んできたように見せ掛け、そして一定の所でピタッと止めてだな、あたかも私の術で止めたような仕様になっていたのだ」
三「なんだって?」
三成は雪玉を投げる手を止めた。
幸「え…兼続殿の術じゃなかったんですか!?」
三「あの術は偽物だったのか?」
三成と幸村の表情が険しくなる。
幸「信じていたのに…!」
三「俺たちを騙すとは、いい度胸だ…!」
三成と幸村は怒りのオーラを纏い、雪玉を兼続に向けて力一杯投げまくった。
兼「ぐほっあだだ!やめ…!………!!」
三成が用意していた雪玉を全て投げ尽くし、二人は雪の中に倒れた兼続を冷ややかな目で見下ろしていた。
幸「ちょっぴり尊敬していたのに…残念です」
三(尊敬していたのに雪だるまでイカを作ってしまう幸村はやっぱり天然だ)
幸「そうそう三成殿、今のが雪合戦というものですよ。雪の遊びを知らないと言いつつちゃんと心得ているじゃないですか。さすがです!」
三「そうなのか。まぁ戦場に出る者として合戦と名の付くものに長けているのは当たり前だろう」
幸「お見事な戦いぶりでした!」
そう言いながら二人は兼続の部屋に戻っていった。
残された兼続は雪に埋まりながら呻いた。
兼「なぜ私がこのような仕打ちを…スタッフの言う通りにしただけなのに…」
はぁ、とため息を付いて首を捻り謙信の雪像を見上げた。
謙信像は雪玉をぶつけられボロボロだった。
兼「お痛わしや謙信公…あの不義な二人を懲らしめてください…」
そう呟くと、なんと謙信像はかすかに震え出した。
兼「!!」
ごしゃっ!!
謙信像は兼続の上に崩れ落ちた。
兼「謙信公まで私を見捨てるのか…」
除雪の当番の下男に発見されるまで兼続は雪の中で泣き続けた。
そして三成と幸村に復讐を誓ったのだった…。
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