□甘い甘い、
1ページ/1ページ




(――あ、甘い、匂い。)



いつも通学で乗る電車を待つプラットホームで、背中合せに備え付けのベンチに座る、名前も知らない男の子。




(今日は、いちご。かな。)





毎日、違う甘い香りを連れてくる。


ふんわり、甘い香りに包まれて電車を待つこの時間が、大好き。





どうやら私は、この当たり前な時間に、甘い香りに、溺れてしまっているらしい。





携帯の着信音が聞こえてきて、私は携帯を取り出す。
お気に入りの、アーティストの曲。



(あれ…、)








(私じゃ、ない。)
「もしもし?」




声が聞こえたのは、ちょうど私の後ろ。






(…驚いた。)






だって、彼と私の、着信音、一緒だったし、それに








(声…初めて聞いた)




見た目にあった、明るいトーンのまだ少し幼さが残るような男の子の声。







プラットホームに、放送の声が響いて、男の子が立ち上がった。







(え、待って、後少し…もう少しだけ、)









甘い香りに、甘い声が重なって。










ああ、そうか。







(私が溺れていたのは―――










甘い、甘い、男の子






(ねぇ!!名前、教えてくれない?)

(…あ、俺?)

(うん!)

(…、(まじで?))






後書き


えーブンちゃんは実はひろいんちゃんの着信音を聞いたことがあってですね。

ソレで一緒に設定してたっていう…
分かりにくくてすいません。

コレブン太視点も書きたいな。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ