□授業終了の合図まで後7分。
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お昼休み、いつもは教室で過ごすのに、なんでだか今日は外に出て歩いていた。
本当になんとなく、だったから、特に何もする事もないし教室に戻ろうと振り返った。
「あー!危ない!」
その瞬間、誰かが叫ぶ声と共におでこに重い痛み、ゴッ…と響く鈍い音。
「ーっ!」
目の前が真っ暗になった。
目を覚まさせば、視界に入ってくる眩しい日差し。今日はめざまし時計より早起きしちゃった。窓辺によって少しだけ身を乗り出して、お歌をうたっている小鳥さん達に朝のご挨拶。
「おはよう、小鳥さん。今日はいいお天気ね。何か良い事が起きそうなよ・か・ん☆」
なんて少女漫画よろしくなお目覚めではなく、見慣れない、白い天井。
少しだけ鼻につく独特の匂いで、今いる場所は保健室だと判断する。
「あ、目さめたー?」
ほのぼのとした声が聞こえて、顔をあげた。
「ごめんねー。
おれのテニスボールが当たっちゃって…痛かったよね?」
気ィ失っちゃうんだもん、と苦く笑う。
て、ちょ、待って!
今、私の前にいるこの男の子は
「芥川くん…!?」
「え?何ー?」
あのアイドル集団の一人、芥川くん!
どどどどどうしよ!
アイドル集団の一人なんてことはそれ程重要じゃなくて、重要なのは、私が芥川くんに恋をしている、ということだ!
その想い人はニコッと微笑みこちらを見ている。
「…あ、せ、先生は…?」
やっと声を出して、この二人きりという空間から抜けだそうと(いや、嬉しいんだけど!は、恥かしくて死ぬ!)、 先生を探す。
「今日出張でいないよー」
な、なんというお 約 束!
「い、今何時…っ」
「6時限目中ー」
授業中じゃないか!
て、私が倒れた、のは昼休みなのに…
もしかして、ずっとついていて、くれてたのかな。
そう思うと、何かが心のなかから溢れてくる。
と同時に、やっぱり恥かしくて仕方ない気持ち。
「あ、芥川くん、授業戻って、も、良いよ?」
恥かしくてしゃべり方がおかしくなっちゃうし、それが更に恥かしい。
…駄目だ、さっきから考えることが恥かしいばっかだ…
「ん、いーよ!おれのせいなのに授業受けてんのは駄目っしょ?」
意外、っていっちゃ失礼だけど、芥川くんって真面目なんだ…。
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