story
□-lost story-
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長い長い雨の日。
家には誰も居なくて、薄暗い部屋の中には雨の音が響いていた。
――1年。
そう、父が亡くなってから今日でちょうど1年。
父は作家だったけど、多分、売れてない。
娘である私が呆れてしまうほどに、父の本が売っているところを見たことがない。
ふと私は、本当に父は本を書いていたのか疑問に思った。
売っているところも、書いているところもみたことがないのだから、仕方がないことだ。
なんて自分を納得させて、私は家の地下にある父の書斎へ足を向けた。
何故、父の本が売っていないのか。
何故、父が書いているのを見たことがないのか。
その全ての答えが書斎にあることも知らずに、私は書斎の扉を開けた。