短編

□ある日の出来事
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先月のバレンタインデーに私は手作りのチョコをあげた



甘いモノが苦手な彼の為にビターチョコを…と思っていたら



その当日、渡した後に見たテレビでお笑いの人が「甘いモノが苦手だからって、苦いモノが好きとは限らないんじゃい!」と叫んでいたのを目の当りにしてショック受けた





甘いモノの正反対は苦いモノ?


それとも辛いモノ?







テレビの彼が言うさっきのセリフに驚きと衝撃を受けた女の人は結構いると思う。



だって私がそうだから…






雑誌に書いてあった記事を安易に鵜呑み

そして、あろうことかその記事の次のページにあったビターチョコを使った“あるモノ”




ビターチョコをふんだんに使った“あるモノ”





渡した直後は彼の笑顔と抱擁に浮かれていたけど




それを見た後の後ろめたさと言うか後悔と言うか



何となく居たたまれない気持ちに襲われたのは言うまでもない。







そして今日はホワイトデー





待ちに待ってた。ではナイけど


ある程度の期待感はある










けど………先月の出来事を思い出すと






彼の事だから“お返し”がナイ事は無いと思うんだけど


イマイチ気分が乗り切れない自分がいるのは確かだ。





ハァ‥自然と出てくる溜め息には「幸せ」も交じっていて



溜め息をつくたびに「幸せが自分の身体から無くなっていく」そんな虚無感にジワジワと侵食されていく心







ハァ







何度目か分からない溜め息を吐き出していたら





ピンポーン





インターホンの音






「はぁい」






休日出勤の彼が帰ってくるまでの時間にはまだまだ早い




勧誘の人だったら嫌だな




そんな事を思いながら開けた扉の向こうに待っていたのは―――――




大きな花束と愛しい彼の笑顔





「‥‥‥‥えっ?」



余りに突然すぎて頭が回らないで立ちすくんでいたら



「呆けてんじゃねぇよ。旦那の顔も忘れたか?」




意地悪な言葉のくせに抱き締めてくる腕は優しくて





「あ、晃サン仕事は?」




毎日嗅ぎ慣れた彼の匂いと温度に、優しくて甘い花の香りも加わり


さっきまで胸にあった暗い気持ちが一瞬で消えた




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