短編

□ある日の出来事
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ある日のこと




俺は幼なじみであって憧れの人と共に時間を過ごしていた



「お前ェ、付き合ってる女が出来たって聞いたがマジなんか?」




煙草の煙を静かに吐き出しながら



俺を見る目は全てを見透かす様な



一言足りとも嘘を吐かせぬそんな目だった



「うん‥」



確か目の前にいる幼なじみは、自分と同じトシの女と籍を入れたばかり





俺の知る憧れの人は、いつだって綺麗な女が隣に立っていても




眉間に皺を寄せ不機嫌な顔をしていた




6才年上の憧れの人



小さかった時は、どうして不機嫌な顔をしていたか理解出来なかった




けど……



自分が中学に入る手前位から何となく理解し




そして納得した




見知らぬ女が甘えた声で



その身を擦り寄せる




キツイ香水



ケバい化粧




モデル張りの身体





愛情より欲情



欲情より色情




何だか全部の女に嫌気がさす




そして―――




いつしか自分も憧れの人と同じく



気付けば不機嫌な顔になってた





「そのトシでマジになれるとは…響は幸せモンだな」



憧れの人は



片方の口角を上げる




その顔も凄ェ格好良くて男の俺でもドキッとする




「そ‥そうかな?」



意中のアノ人以外に反応した心臓に驚きを感じ少し焦る



「あぁ‥俺なんて24になるまで掛かったんだからな」



短くなった煙草を携帯灰皿に押しつけながら話す姿も様になる




同じ男として生まれてきて


羨ましいやら嫉ましいやら




きっと目の前にいる憧れの人は



どんな事をしても


どんな格好をしても



どんな言葉を発しても



きっと様になるんだろう



「今度逢わせろよ」



「え?」



「今度逢わせろって…響を虜にした女に」




嫌味な程、綺麗な微笑みを浮かべる憧れの人




こんな綺麗な顔を見せつけられたら



どんな女だってイチコロだろう




そう‥望サンだって




「…やだ」



気付けば自分の口から、こんな言葉が出ていた



「あ?」



「ヤだ…」



「何で?」



「恐いもん…」



「はぁッ!?」



どうせヘタレだよ



望サンと知り合えてから気付いた自分のヘタレっぷり





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