短編

□ある日の出来事
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晃サンの部屋で生活するようになって二週間経つ間に


晃サンの知らない部分をしった






「晃サン‥ごめんなさい」



「……」



「ねぇ‥晃サンてば」



「……」



さっきから、ずっと黙ったまま



どうしようか




衣都は、ずっと黙ったままの晃を見つめているが


晃は一向に衣都を見ないし完全に無視してる




事の発端は、今から十分程前



――





今日は天気も良く洗濯物がよく乾く



掃除もしたし気持ちいい



けど、布団を干したい



ここが二階だったらベランダが付いてて便利だったろうな



この部屋は1階でベランダが付いてない



だが、その代わり小さな庭付きになっている




何の気なしに聞いた事



「ねぇ晃サン、どうしてココを選んだの?」



「…1階だったから」



簡潔な言葉を煙草の煙と共に吐き出した



「1階だから?」



「ん…」



「外観とか、家賃とか、通勤に便利とか、じゃなくて?」



「ん‥」



少し呆気に取られた



晃サンらしいと言えば、そうだけど



もう少し理由が欲しかったな



「でも何で1階が良かったの?」



「あ? …あんまり高い所好きじゃねぇから」



いつもはポーカーフェイスなのに


この時、ほんの少しだけ顔を歪めた




「高所恐怖症って事?」




「そこまでではねぇけど、敢えて高い所には行かねぇな」




煙草を灰皿に押しつけながら話す晃サン



「プッ…」



こんなに整った顔だけど


恐面で皆に一線を引かれるのに…



そのギャップが何だか可愛く見えて


思わず吹き出した



「そうなんだ…クス」



何だか目の前の晃サンが


だんだん可愛らしく見えてきて


笑いが止まらなくなる




「クスクス‥何か可愛いv」



「あ゙!?」



晃サンが眉間に皺を寄せて私を睨んでくるけど



その人が高い所が苦手って



笑いが止まらない



「クス…でも何で苦手になったの?クスクス」




「…ガキの頃、屋根で遊んでて落ちた…」



少し不貞腐れた様に話す




そんな姿、初めて見た



やっぱり可愛らしく見える



「クス‥そうなんだ」



「‥衣都、笑いすぎだ」




私から視線を逸らし、新たに煙草に手を伸ばす晃サンの言葉すら可愛く聞こえてくる




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