□さん
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早朝に何かの電子音で目が覚めた。




この家で電子音と言えばレンジと目覚ましと携帯位のはずだ




(…何だ?)





聞き違い…?の訳はナイ




時計に目をやれば電子音が響く時間にはまだ遠い。




不思議に思い首を傾げていると



不意に米の匂いが鼻腔に届いた。





(そう言えば米磨いでたっけ)




昨日の晩飯後のアイツの行動を思い出す。





朝から米の匂いなんて何年ぶりだろう。




それは切ない様な、でも暖かい様な……その2つが複雑に絡み合い、胸がソワソワして落ち着かない心境に陥らせる。





(あぁ…どうにもなんねーな)




妙な気持ちを抱いたまま、まだ薄暗い部屋の天井を眺めれば…




――ねぇ、蓮クンは嫌いな物ある?――



――ん?ねー。けど――



――けど?――



――大好物ならある!――



――大好物?――




――  チャンに決まってんだろ――



――私、食物じゃないから!――





何年か前の1シーンが突如浮かんできた。





「……」



あの頃の俺はアイツに夢中だった。



それなりに恋を重ねてきたけどアイツは最初から特別だった。




年上だったけど、おっちょこちょいで子供っぽくていつもニコニコと笑っていた。けど、時折感じる暗い瞳。


細い身体が儚く見えて、目の前から消えてしまいそうで―‥



そうならないように我武者羅にアイツを抱き締めていた



……でも、やっぱりアイツは俺の前から消えた




――ごめ、なさい――




涙に濡れた声が今でも聞こえてきて



胸の一番奥の柔らかい部分が鋭い刃物で抉ったような痛みが走る。



どうして良いか分からない痛みは胸から全身にジワジワと広がり息苦しくなっていく。




受け入れなきゃなんねー痛みだって分かってんのに


俺は未だにソレから逃げている。




アイツを奪ったアイツが憎くて……




アイツに従って付いていったアイツも憎くて‥




あの時のアイツを引き止めなかった俺が憎くて‥





(負のスパイラルってか)




考えたくないのに、そう思っても俺の脳みそはそれに憑りつかれたみたいに嫌な思いを浮き彫りにしていく。



(‥やめてくれ)



過去の現実から逃げたくて布団を頭から被り、固く目を閉じる。





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