短編

□ある日の出来事
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「キャーっ格好良い!!」




一際、甲高い女達独特の黄色い声




うるせェんだよ!と、思いつつも


自然とソコに視界を合わせれば





そこには……





ベスト姿で腕捲りをし



黒い髪を立てて






眉間に皺を寄せた長身の男が立っていた





その男は目の前に座る女達の黄色い声や甘えた声に笑顔で応え―――…




―――る事は無く




「静かにしろ」




さっきより皺が深くなり



不機嫌丸出しの顔に



低い声で命令口調




それでも女達は嬉しそうな声を出す




「晃サンってば相変わらずクールだよね!」


とか



「そこが堪んない!」




とか…称賛の声





それでも、その人は顔色一つ変える事なく




「煩くすんなら帰れ」




と、一刀両断





そこで女達は自分等の声が周りに響いてるのに気付いた様子



「ごめんなさい」




何回も自分の頭を下げ


その男に詫びを入れていた





「分かったんなら良い…」




どこまでも上目線


それでも声色一つ変えずにいる男に目が釘づけになった





格好良い…





その男に見惚れてしまってる自分に気付かないでいたら




バチッと視線が重なった





離れた距離からでも分かる力強い眼




その眼に見られたら、引きずり込まれそうな



そんな感覚に陥った





暫らく見つめ合った俺達





それに終止符を打ったのは




誰でもないソイツ






ニヤリと片方の口角を上げ意地悪な笑みを浮かべられた瞬間に
俺の意識が現実へと戻った



Σハッ!!

咄嗟に視線をグラスへと外したけど



さっきの顔が頭に張り付いて離れない





意地悪な顔のクセに、とても妖艶で



同性に対し初めてドキドキした





………ドキドキ?





え???



ドキドキした??





この俺が男に??






女に嫌悪感を抱いたのは

そのせい?




俺……禁断の世界に踏み出したのか??




一人、脳内でパニくる俺





そんな時に先輩が「晃サン」と声を張り上げた




晃サン……どっかで聞いた名前だな




未だパニくってる俺には、その名前が誰かなんて想像出来なかった





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