□に
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チンっとエレベーターが降りてきた音




扉が開いたのを確認してから荷物を抱え直して乗り込む。




姉ちゃんも俺の後ろに付いて来たのを確認し最上階のボタンを押す。






ウィーン





静かなモーターの音が響く狭い空間で
姉ちゃんの視線が俺と押されたボタンを何度も往復していた。





(…何だよ)





…だんだんと居たたまれない空気になってきた





「何だよ」と口を開こうとした瞬間

小さな浮遊感と共に着いた証の音が鳴る。





静かに開いた扉を手で押さえ目で姉ちゃんを誘導するも、その意味が分からないのかキョトンとした表情で首を傾げた。




「おら‥早く出ろ」




その声で、おずおずといった感じで出た姉ちゃんに続き自分も出る。




部屋の鍵を尻ポッケから出しながら「こっち」と声を掛ける。





最上階の角部屋





と言っても、このマンションの最上階は2つしかないから
どちらを取っても角部屋になるんだが…





鍵を差し込み玄関の扉を開けた。





ガチャと開かれた空間は、数十分前に出るまでと同じで…
それは当たり前の事なのに胸に小さな痛みが走った。




「着いたぞ」




胸に走った痛みを胸の奥に無理矢理押しやって


サンダルを脱ぎながら姉ちゃんを見た










………………おい?





両手で口を押さえ、デカイ目を見開いて動かないでるんだけど?





昨日、帰ってきてから一応片付けとかしたから散らかってないとは思うんだけどさ…





それ以外で俺なんかしたっけ?





動かない姉ちゃんに首を傾げてると
姉ちゃんの目が俺に向いた




「あな、あなたって“お金持ち”なんですか?」




「………は?」




自分が思い描いていた言葉とは全く違ったもので
瞬時に反応が出来なかった





「こん、な都会で‥しかもマンションの最上階って‥‥」




「……あぁ。ここ新築じゃねーから」




そんなバカ高いもんじゃねーよ。って言おうとしたが




「凄いっ!私、初めて“お金持ち”の人を見ました!」




俺の言葉を遮って聞こえてきた声は
俺自身に遣る瀬なさ感を憶えさせた。





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