ヨロズ小説置き場

□☆ボクの理想、キミの願い
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「それが何だって言うんですか?蒼星石はただ臆病になっているだけなのですぅ。それで周りが見えなくなっているだけで本当は持ってるんですよ。もし、蒼星石の心に茨があるのなら翠星石がこの如雨露で茨を腐らせて取り払ってやるですよ。」
とても心に染みるものを感じる。
首に回された両腕、そこから感じる体温。

翠星石は大丈夫だから…ちゃんと二人いるからと…ボクの背中を子供を慰める時みたいに撫でてくれていた。

ボクはここに自身があるんだ、やっと実感が持てたのかもしれない。


『ありがとう…翠星石。』
心から思った言葉。っと言っても普段から嘘は言わない性質なのだが…それでも……っ

『でも、もう…戻れないんだよ、翠星石…。』
翠星石の胸を押して突き放す。

『だってもう、アリスゲームは始まってしまった。ボクらに課せられた使命は姉妹たちを倒して自らがアリスになることっ!』

それを…忘れた訳じゃないでしょ…!?

…そうこれはボクらが生まれたときから決められていた宿命なのだ。

お父様の理想を叶える為に作られた存在。

それができないのならここに存在価値なんてないのだ。


『ボクはアリスになる…。』
自分自身を見つけられた今なら尚更…自分自身を存在させ続ける為には勝つしかないのだ。


「そ、…蒼星石っ!!」
『だから…もし立ち塞がると言うのならボクはキミをも断ち切ってみせるっ…!!!』
ボクは片割れに鋏を向けて振り上げる。
これがボクが決めた覚悟…。

…それなのに…なんでキミは前に立ちふさがるの!?


「翠星石は蒼星石と戦いたくないですぅ。でもそれでもって言うなら今ここで翠星石を切り捨てるですぅ!!」
『なっ…!?』
これが片割れの答え。自分のことは構わないと…純粋にただ一緒に居たいだけなんだという切なる気持ち。

…でももう戻れない。ここまでして、今更戻れないんだっ!!!


だけど…


だけどボクは挟を振り上げたまま止まっている。

覚悟してたのに…鋏が振り下ろせない…。


―――そこまでしてやっと分かった……ボクも心の底から思っていたんじゃないのである。ただ、仕方がないと感情を殺していたんだと…。
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