ヨロズ小説置き場

□☆桃薔薇の求めたモノ
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「うにゅ…?」
…雛苺は鞄から目を覚ました。
だがいつもと雰囲気が違う。

「真紅……?」

「翠星石ぃー」

「ジュ〜ンっ!!」
姉たちやジュンの呼んでみたが返事が返ってこない…。
時計を見ても別に遅く起きたわけではないようだ。
しかし、こんな時間にジュンはまだ起きてはいないのだろうか…。
期待してベットを見てみたがジュンの姿は見当たらない。
部屋の周りを見渡してみたが、誰かがこの部屋にいる気配はない。
―――嫌な感じがした。

「みんな早起きさんになっちゃったの…?」
不安を感じながらも一階に下りればみんながいると思い、ドールズ専用台を持ち出し、ドアを開けて階段を下りて行った。

だが、みんながいるはずの居間にさえ誰の姿もない。
「み、みんなきっと…お出かけなの!だから待っていれば帰ってくるわ、ヒナ…それまで我慢なのよ。」
自分の気持ちを隠すために…いつものようにお絵かきやおもちゃを使って遊んでみたりしたが、数分もしないうちに耐えきれなくなった。

そこで理由を考えることにしてみた…
のりはいつも通りガッコウというところに行っていることにしよう。
真紅はnのフィールドに用があることにしよう。
翠星石は今日おじいさんのところに言って茶をしばきにいっていることにしよう。
そしてジュンはトショカンってところに出かけていることにしよう…。
つまり今の桜田家には今雛苺しかいないことになっている。

これなら皆がいない理由がはっきりする…ハズだった。
だが、結局は今ひとりでいることには変わりがないことに気付く。
そしたら今まで我慢していた滴が雛苺の頬を伝った。

「独りは、いやなのぉ…」

過去のことを思い出す。
雛苺にとっては一人でいることがどれだけ寂しかったのだろうか。
カバンの中で彼女を待ち続けるということがどれだけ長かったのか、永遠に誰にも相手にしない…という恐怖を感じたことか。

しかし、真紅達と一緒に暮らすようになってそんなこと感じなくなっていたというのに…今日に限って誰もいない。

「みんなぁ…どこに行ったのぉ…?」
もう顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。

この誰も居ない空間はあの頃に感じた孤独な世界と何の変わりがない。



なら、これ以上世界を見たくない―――。

そう思ったとき、雛苺の後ろには白い結晶が見えた気がした。
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