ヨロズ小説置き場

□☆ボクの理想、キミの願い
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―――キミとボクは同じじゃない。キミは分かってくれるかな…。


ねぇ、翠星石…。






「納得いかねーです!」

だけど、キミはボクの言葉を聞き入れてはくれなかった。
「双子なのにどうして同じじゃいけないんですぅ!?」


ボクは一人として見てほしかった。
双子の片割れなんて…二人いなきゃ、何も出来ないって…キミはそんなこと言われてもいつまでも平気でいられるの!?

ボクらは双子…でも、全てが同じって訳でもないでしょ?
いくら同じ顔だとしても、人格までは同じってわけじゃない。

「双子の姉としてゆるさんですぅ!!」
…だから…何で双子だからって言うのさ?
キミは臆病でいつも僕の後ろには隠れたりしてたけど…二人っきりだったときはいつもキミが前にいてボクを引っ張っていっていたんだよ?
キミは自身をちゃんと持ってる…でも、ボクはその自身がないんだ。
ボクが自分自身を見つけるには離れなきゃいけないんだ…。

―――なのに…!!

「そんな辛そうな顔しながら言われてたらますますほっとけねーですぅ!」
『…っ』
「蒼星石?…翠星石は貴女がいるからこうしてられるんですよ?双子だから判るですよ…自分自身がないって言いたくなる気持ちは」
『ぇ…』
姉は今なんと言った?判ると言った…?
歯を食いしばる。判るだって?……そんな、こと…っ!!!
『…何もわかってないよ翠星石…。翠星石はもう自分自身を持ってるじゃないか…だけどボクはっ…!!!』

翠星石はわかっていない。双子だけど同じじゃない決定的な違い…。
今のままじゃアリスとしての器もだけど、心も不完全…至高の領域に行きつかない。
お父様が求めるアリスになるためには完璧じゃなきゃいけないのだ。
この戦いに勝ったところで意味がないのだ…自分自身がなくては…。

「翠星石には判るですよ…だって蒼星石もちゃんと自分自身を持っているのですから…ただ翠星石は、昔も、これからも、ずーっと蒼星石と一緒にいたいのです!それは…蒼星石も同じじゃないんですか…?」
最後のほうは泣き声になっている。
…確かにどんなことがいってもいつも一緒だった。
そしてこれからも一緒にいたい…それは僕も同じ気持ち。

でも、ボクはっ……


『ボクは自分自身を見つけられないで今も茨に絡みこまれているんだ。探そうとすれば探すほど、でも見つけたくて足掻いてもがき続けても…さらに絡みこまれてくんだ。…そんなボクの…どこに自分自身があるって言うんだい!?キミはっ…!!!?』
自分の中に渦巻く闇を言い捨てる。
姉の顔が目の前から消えた…翠星石は、ボクを抱きしめていたからである。
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