無双
□きっかけ
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「で、お前はなぜここに居る?」
あれからずっとあのような会話が続いて、わしは疲れた顔でやっと本題を切り出した。
達成感を感じるのはなぜだろうか?
「ちょーっと、遠呂智軍の偵察かな?」
素直に答える彼女に対して目を丸くする。
何度も言うが、わしは遠呂智の武将だ。そしてこいつは敵。
敵の前で堂々と『偵察』の言葉したらどうなるかわかっておるはずだ。
「敵の前で偵察と言えたものだな。どうなるかわかってるだろ?」
真剣な声で言ったが、返ってきたのは陽気な声で
「だってまっくん、そんなことしないもん♪」
笑顔でそんなことを言われるとは思ってもなかった。
こいつはわしのことをどこまで信じてるのか…
そう思うとなぜか顔が熱くなる。自惚れというやつか?
だがその熱さは、次の彼女の言葉で一気に冷めた。
「ま、これはアタシの意思でやってることだしね」
「幸村の命ではないのか?」
「うん。幸村様とお館様と離れちゃったから」
苦笑いをしながら、地面を蹴るような動作をする。
だけど彼女のことだ。もう幸村と信玄の居どこも知っているはず。
「幸村のとこに行かないのか?」
「幸村様は今、蜀ってとこで頑張ってんの。お館様も戦バカと組ながら信長に協力しているしね。今のあの二人には、アタシら忍は必要ないみたいだし」
「だからアタシもどこに仕えようか考えてるの」って平気そうな笑みを見せる。
だがその笑顔はとても悲しく見えて、思わず抱きしめてしまった。
抱きしめられたこいつは驚き、わしの腕から逃れようとする。
「まっく」
「わしに仕えぬか?」
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