無双

□貴女の居る場所なら
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日も登りだし、辺りも明るくなった頃。


尚香は遠回りをして、別の脱走場に着いた。


警戒するように周りを見渡すが、人の姿はない。


安心したのか、フゥーと息を吐いた。



「ここなら大丈夫ね」


「なにが大丈夫なんですか?」


「それは陸遜が来な…ぃ、か…」



人が居ないと思っていたら、後ろから聞き覚えがある声が聞こえた。


喋る声も、語尾に近付くにつれ小さくなっていく。


嫌な汗が頬を伝う。


ゆっくりと振り返ると、やはりそこに居たのは、逃げれたと思った人。



「私が何か?」


「何でここがわかったの!?」



聞く言葉はそれ。


他にも聞きたいことが沢山あったが、頭の中で整理が付かず、今さっき思ったことが口から出たのだ。


その尚香の質問に対して、陸遜は笑みを絶やさず話だした。



「貴女が行く場所がここだと思いましたから」


「とゆうことは、あそこから真っ直ぐここに来たっていうこと?」


「はい」



その答えを聞くと落胆した。自分がした遠回りは、一体何のためだったのかと思う。


無駄な体力を使ったのと、目の前で余裕の笑顔を振り撒いている軍師に怒りを覚えた。



「なんで私に構うのよ!!」


「これが私の役目ですから」


「役目じゃなかったらしないわけ?!」


「いえ。します」



陸遜の言葉に驚き、次の言葉が出てこず、代わりに口が少し開くだけで終わった。


思考を再開させ、ギュっと口を閉じて次の反抗の言葉を考える。



「役目じゃないのにする?だったら私はずっと出掛けられないし、鍛練だって出来ないじゃないの!!!」


「私がいつ出掛けてはならないと言いましたか?」


「……へ?」




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