無双
□おかえり、ただいま
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「よっと」
キンッ
「っ!まだまだ!!」
ある広場で聞こえる元気な声と、鉄がぶつかり合う音。
一人はあやめの服を着た少女。
もう一人は黒い服を身に纏い、赤みがかかった髪をした少年。
二人はここで修行をしていた。
カキンッ!
「にゃは〜ん♪アタシの勝ち☆」
「…お前、強くなったなι」
「暇だったんで、修行でもしてました」
うーん、と背伸びをして、空を見上げた。
そして思い出す。あの時、一緒に戦場を駆け回っていた主人のことを─…
それを察した佐助は、ため息を吐いてくのいちを見た。
「お前は、戻ってこないのか?」
空から今度は地へ視線を映し、複雑そうな顔で言った。
「アタシは解雇されたんですよ?それに、今はアタシの代わりの子が居るんでしょ。戻れるわけ…ないじゃん」
目を閉じたら思い出す、幸村の言葉。
『なんですか?幸村様』
『くの……。明日からもう来なくていいぞ』
『へ?幸村様…冗談でしょ?』
『これから激しい戦となるだろう。…そなたを傷付けたくないんだ』
『アタシなら大丈夫ですよ。だから─…』
『…すまない』
その後、辛くて飛び出したものの、行くあてもないので里に戻ってきた。
佐助はたまに里に戻ってくる。くのいちは理由は知らないが、実は佐助はその場面を見てしまったのだ。
だからくのいちの事を気に掛け、週に一度は里に訪れるようになった。
そして、訪れる度に、くのいちは佐助に幸村のことも聞いていた。
今は『ねね』という忍が居るというのも、佐助に聞いていたのだ。
悲しいそうな顔を見せるくのいちを見ていたとき、佐助はあることに気が付いた。
「ま、首領に頼んで、新しい主を見付けてもらいますよ」
「お前はそれで、本当にいいのかよ」
「……うん」
「だそうですよ。お前はどうすんの?幸村」
「え…?」
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