無双
□夏の脅威
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暑い夏が呉にも来た。
その暑さは去年より暑く、庭の一角にある木の下でのびている凌統。
「あつー」と言いながらでも、彼は着崩すこともなく、少し温度が下がる木陰で倒れてた。
すると小走りで走ってくる音が聞こえる。
足音で大体は予想は付くが、あえて音がする方へ向かずに上を見ながら待つ。
すると自分の視界に入ってきたのは、やはり予想通りのシルエットが目に映る。
短かい赤茶っぽい髪型に翡翆の瞳。いつもと同じ……と思ったが、違うところが一つあった。
「やっと見付けたわ」
「どうしたんですか?!その格好は!!」
驚いた勢いで上半身が起き上がる。
それもそのはずである。昨日までいつもの衣装だったのに、今日は肌の露出が激しい服だった。
「あぁ、これね。今日は朝から暑かったでしょ?だから薄着にしてみたの」
「薄着すぎますよ!殿にでも見付かったりしたら」
「大丈夫よ」
にこっと笑うが、その自信がどこから来るのかが知りたい。
彼女はそんなことを知らないで自分の隣に座りこむ。
そして大きく背伸びした後にこちらを向く。
「涼しいわね。ここ」
「俺が一生懸命、涼しいところを探しましたから」
「確かに。日は当たらないし、涼しい風も吹く……最適の場所ね!」
暑かった尚香にとって、涼しい場所を見付けたのは何よりも嬉しいことであり、自然に極上な笑顔が出た。
それを目の前で見た凌統は、赤くなる顔を見られないためにすぐに正面を向いて話題を考える。
「反則だっつーの」と小さく呟いたが、尚香の耳には届かなかった。
必死で考えてると、パッと一つ思い付いた。
「そういえば、俺に用があって探してたんでしょ?」
赤くなった顔を冷まし、また横に居る尚香を見る。
「あっ」と思い出しかのような声と表情をするものだから忘れていたのだろう。
その動作さえ可愛く思えて、また顔が赤くなりそうになった。
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