無双
□仕事終わり
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音の数が少ない夜…
月明かりだけが頼りのこの時間は、忍がよく活動する時間でもある。
闇に紛れる影となり、今も自分の仕事をこなしているだろう。
一人、自分の仕事が終わったのか、城に戻っていく影が見える。
ふっくらとした帽子が印象的で、姿を消したかと思うと、いつの間にか城の中に彼女は居た。
「たっだいま〜♪って言ってもみんな寝てるか」
ふぅっと疲れたかの用意ため息を吐き、背筋を伸ばす。
「さて、お館様に報告して、もう一仕事しますか」
信玄の部屋に行く為、襖に手をかけようとした時にガラッと目の前の襖が開く。
「に”ゃっ!!?」
「やはりそなたか」
襖の向こうから出てきたのは、くのいちの主、真田幸村だった。
いきなりの登場に驚いたくのいちは、変な言葉を発してしまった後、幸村の気配に気付かなかったことに少し悔やんだ。
「まだ起きていたんですか?もう夜中ですよ」
悔やんだ気持ちを誤魔化すように幸村に言う。
「少し、本を読んでいたのだ」
「凄いですねー。アタシだったらこんな時間まで無理ですよ」
「仕事は別ってことか」
幸村のその言葉に、くのいちは意味がわからなかった。
そんなくのいちを見て、呆れてついつい溜め息が出てしまう。
「アタシの顔を見てため息なんて失礼ですね」
ぷぅと頬を膨らませながら睨む。
それを幸村は横目に見ながら、くのいちに背を向ける。そしてまたため息一つ。
「私が変わりに報告するから、そなたはもう眠っていいぞ」
その行動に彼女は気付いた。だけど、それはまだ確信とまではいかない。
くのいちは冗談交じりに、人指し指を立てて聞いてみた。
「もしかして幸村様。アタシのことを心配してたりして♪」
歩こうとしていた幸村の足が止まったのを、彼女は見逃さなかった。
冗談交じりでやったことが、主のわかりやすい行動でそれは確信へとなったことに、こっちが逆に驚かされる。
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