無双
□雨が好きな理由
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ザァァァァ─…
梅雨入りしたこの季節。
城下町は傘でほとんど埋めつくされ、人の姿を上から見ることはあまり出来ない。
その城下町から視線を、雨を降らせる原因の雲へと変える。
「いつまで降るんですかねー?雨」
くのいちは窓に肘を付き、その上に顎を乗せて恨めしそうに雨雲を見る。
ここ最近、甲斐は雨続きで何も出来ないくのいちは少し不機嫌だった。
「もぉ、さっさと雨が止めばいいのに。ね?幸村様」
後ろに振り向き、机で静かに読んでいる幸村を見やる。
幸村も、雨で鍛練などが出来ずにいたが、くのいちより不機嫌ではなかった。
とゆうより、不機嫌には見えなかった。
「私は止まなくてもいいと思うがな」
視線を本に向けたまま答える幸村に、くのいちは「あら?ι」っと声を出して驚く。
「何でですか?仕事も出来ないし、遊びにも行けれないし、なによりずっと城に居て暇じゃないですか」
現に幸村様も本を読むしかないですし、っと手を頭の後ろで組み、幸村を見ながら言う。
くのいちの性格からして、そろそろ限界だろう。不機嫌なのが顔にも出ていた。
幸村は本を静かに閉じて、体をくのいちのほうに向けた。
「そなたは雨が嫌いか?」
今まで雨に向かって「止まないか」とか「暇」とか言っている人に、今更こんな質問をすることにくのいちはまたも驚いた。
頭の後ろで組んだ手を離して答えた。
「今まで言ってた通りですよ。アタシは雨が嫌いです」
「そうか。私は好きだ」
またいきなりっと思う。
自分の主人はこんな人だったかと一瞬考えたほどだ。
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