フルサト
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そっと息をついて、音の消えた世界を見る。枠に囲まれて調和した、小さな場所を。
十年一昔と言ったのは、誰だったろうか。考えても思い出せないまま、ベットによりかかる。
めまぐるしく移り変わる何かを欲しくもないのに追い求めて、そうして何を得たのだろう。何を手に入れて、何をなくしたのか。何を蹴り落として、ここにいるのか。
やめよう。首をふって、笑顔をつくる。もう少し明るいことを考えられはしないだろうか。
明日はいい日だと、心の底から信じこんで。
そうして何を始めるなら正しいのか。
負に傾き始めた思考を、なだめながら眼を閉じる。視界の片隅で、たぬきが笑っていた。