テノヒラ
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草原に座りこんで、空を見上げる。自然公園の散歩道の死角にあるこの場所は、もう二年以上、私のお気に入りであり続けていた。
体の力を抜けば、拳が大地に触れる。草の温もりが少し心地よくて、少し笑った。
ふっと眺めたテノヒラは、力をいれた気もしないのに握られたままで、この折り曲げられた指の中に私は何を抱えこんでるんだろう、となんとなく思った。
脈絡もなく、年をとるにつれてなくしたものに思いを馳せる。
全身で泣きわめくことだとか、何もしらない自分だとか、詐りのないあの笑いだとか。大切なものをいくつも落として、何を引き換えに得たというのだろう。
世界の不確かさを遠く思いながら、折り曲げられた指を眺める。なくさなかったたった一つのものがこの中にあるのだろうか、と夢想して、笑った。