俺の好きな奴は、いつも他人のために無茶をする、綺麗な銀髪の可愛らしいガキだ。





●片道通行●










あのガキを意識し始めたのはいつだっただろうか。あのガキが愛しいと思い始めたのはいつからだっただろうか。まぁ確かに最初はいけ好かないガキだからって相手にしなかったけど。だからあのガキはただの煩いガキだとしか認識していなかったはずなのに。







気が付いたら、俺はあのガキの事が終始気になって仕方なくなっていて…。








最初は訳が分からなくてイライラしたけど、今はこの気持ちの正体を見付けた俺(経験豊富な大人だからな)。そう、これは恋で、あのガキに向けてるの愛情で。




だけど、どれだけ俺があいつの事を想っていようが全く無意味。だって俺らは仲間の誰からも犬猿の仲って認識されてるし、俺もそう思ってたし。だから、俺があいつに気持ちを伝えたって、絶対に笑われるか罵られるかのどっちかだと思う。




「言っちまえばいいじゃねーか」




そう言うのは現在八本のコーライッキ飲みに挑戦しようとなさってるおやびん。俺の恋心を知っている唯一の存在だ。




「そんな簡単に言われましても…」
「だって言ったらそんで全部解決だろ?ならお前の悩みもぜーんぶなくなるじゃん!」
「確かにオヤビンの言うことは的を得ていますけど…今の俺にそんな度胸ないですよ」




爛々と目を輝かせて語るオヤビンと脱力感しか湧かない俺。せっかくのおやびんのお言葉にちゃんと答えられないなんて、俺はなんてダメなんだろうか。




しかし結果が目に見えてしまっているんだから仕方ない。言ったら最後、俺はあいつに一生避けられて過ごすだろう。そんな映像が簡単に頭に浮かぶのが怖い。イコール俺は諦めてるって事になる。






要するに俺は、ただの臆病者ってわけで…





結果の見えてる博打に挑む程、俺はバカじゃない。









チラリと遠くで心太と楽しそうに雑談を交わしているガキに目を向ける。距離が離れているので何を話しているのかは分からないが、時折見せる笑顔によって、それはそれは楽しいお話をしているんだろう事が丸分かりだった。俺の前では顰めっ面しか見せないくせに。
(ちぇ、俺がこんなにお前の事で悩んでんのに、お気楽だよなぁ)





心の中でガキに毒づく。だけどあんなガキらしい所に惹かれているのは揺るぎようのない事実で。




「好き、なんだけどなぁ」
「それをそのままヘッポコ丸に言ってやればいいじゃねぇか」





独り言にまで答えなくていいですよ、オヤビン。




「悩んでたらなんも始まんねぇんだからよ、さっさと行って告白してこいよ破天荒」





八本のコーラを手に持ったオヤビンが笑顔でそう背中を押してくれた。本当に、貴方は俺の本当の恩師でおやびん、なんですね。




「決心が固まり次第、ですね…」




恩を仇で返すつもりはない。おやびんがせっかく助言して下さったんだ、俺はそれに従わなければならない。






気持ちの整理をつけつつ、俺は空を見上げた。









「…両思いなのになぁ」






そのおやびんの呟きは、俺の耳には入らなかった。











end





―――――

オヤビンのキャラが…!オヤビンのキャラが…!オヤビンの(しつこい)。
そんな訳で破天荒verでした\(^O^)/なんだか乙女思考みたいだが気にしない!これの続編読みたいって方居ましたら遠慮なく言うてください!(いねぇよ)


栞葉朱那

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