S

□食
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お腹が空いた。
1ヶ月くらい前から何も食べてない。
食べ物がない。
もう動く気力すら……。


ギィィ


すぐ隣で扉の開く音が聞こえた。
床に座ったこの位置からだと、開いた扉が邪魔で誰が来たのかわからない。

「食べ物が手に入ったんだ」

男が嬉しそうに生肉を頬張って、埃の積もった地面に座った。
この男は確か…私の旦那だった気がする。

「ほら…君も食べなさい」

ゴロリと肉の塊を私に転がす。
明らかに男の肉の方が大きかったが、今は少しでも空腹を満たせるのならそれでいいと思った。
床の埃のせいで、赤いジューシーな肉はやや白くなってしまっていたが、脂肪のたっぷり付いたそれは、とても柔らかそうで魅力的だった。


一体何の肉なのかわからない。


でも私はそれにむしゃぶりついた。




…そういえば息子は何処へ行ったのだろう。



私は夢中で肉にかぶりつきながら、フとそんな事を思ったが、一瞬にしてその考えは消えた。

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