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□過去日記
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私は今、庭で私の家族と一緒にバーベキューをしている、隣りに住んでいる仲の良い親子を見て昔の事を思い出しています。


秋の匂いがし始めたこの季節。
私はある事件を思い出しています。
バーベキューなんてこの際どうでも良い。
今、私は過去の記憶を手繰り寄せています。




******過去日記******





それはずっと昔のことで。
そう、あれは私がまだうんと幼い頃。
オシャレにも恋愛にも興味のないくらい小さな頃。
私は母から弟の世話を頼まれました。

小さなまだ赤ちゃんだった弟は、先ほどまでそこで遊んでいたのに少し目を話した隙に何処かにいってしまいました。私はとても焦りました。

「お母さんに叱られる」

弟の名前を力一杯呼んで家中を探し回りました。
キッチン、リビング、寝室、トイレ。
部屋という部屋は全て探しました。しかし彼は見つかりませんでした。

あの小さな身体で一体何処へ行ったのでしょう。

母は厳しい人でした。彼女に怒られる事を想像すると身震いする程怖くなり思わず泣きたくなりました。

一体弟は何処へ行ってしまったのでしょう。


しばらくして庭へと行きました。もしかしたら外に出たのかもしれない、そうに決まってる。
庭には私よりも大きな犬が居ました。名前をカナと言います。
私の1歳の誕生日に父が買ってくれた私と同じ名前の犬です。
カナは凶暴なので私は近付きたくありませんでした。しかしカナの足下に何やら柔らかそうな肉片を見つけてしまいました。

もしかしてあれは…。

恐る恐るカナに近付いてみました。幸いカナは居眠りをして居たのでそれを引き寄せる事はたやすい事でした。
私の予想は的中しました。
それは紛れもない弟の身体でした。
乱暴なカナに踏み付けられたのでしょうか、引き契られた服の隙間からは鬱血した腹が見えました。
腕は変な方向へ曲がっていて肘から白い固そうな物が突き出ていました。
口からはミルクと血が混じってピンクになった液体が吐き出されていて、右の瞳は何故だかポロリと飛び出ていました。
舌をだらりと出し力無く空を見つめるそれは既に息絶えていると解る程生気が無く、私は愕然としました。
この時初めてカナの本当の脅威を知った気がします。

どうしよう、お母さんに叱られてしまう。

私は今度こそ泣きました。弟が死んでしまった、私が怒られてしまう。

とにかく私は見た目だけでも正常に直そうと、泣く事を止め弟の残骸に触れました。
まだ身体は温かく、湿った風さえあったのでこれが死体だとはあまり思いませんでした。
まず私は腕を元の位置に戻しました。白い固いものが怪我の穴を大きくしそこからは血が出てきていましたがそこにはビニールを当てて覆い隠し、血が流れないようにしました。

次に目の怪我が気になったので無理やり押し込んでみたところ、グニュグニュした瞳はアッサリと潰れてしまいました。そこからはドロリとした透明のジェルの様なものが出て来て、面白くなってつい治療と言う事を忘れてしまい、正常だった瞳も潰してしまいました。




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